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神戸地方裁判所柏原支部 昭和47年(ワ)25号 判決 1975年3月19日

原告 河村三郎こと 河鐘弼 ほか七名

被告 国

訴訟代理人 岡準三 田村正巳 前垣恒夫

主文

被告は、原告河鐘弼に対し、金三、七七四、〇〇〇円およびうち金三、四七四、〇〇〇円に対する、同卞廣子に対し、金三、五四四、〇〇〇円およびうち金三、二九四、〇〇〇円に対する、同吉見徳次に対し、金二、七三四、〇〇〇円およびうち金二、四八四、〇〇〇円に対する、同吉見幸子に対し、金二、五二四、〇〇〇円およびうち金二、三二四、〇〇〇円に対する、同吉見喜代治に対し、金一、八八〇、〇〇〇円およびうち金一、七三〇、〇〇〇円に対する、同吉見はるゑに対し、金一、五八〇、〇〇〇円およびうち金一、四六〇、〇〇〇円に対する、同上山八郎に対し、金一、八八〇、〇〇〇円およびうち金一、七三〇、〇〇〇円に対する、同上山竹乃に対し金一、五八〇、〇〇〇円およびうち金一、四六〇、〇〇〇円に対する昭和四七年九月一七日から各完済に至るまで年五分の割合による各金員を各支払え。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その三を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。

この判決は、原告ら各勝訴の部分に限り、それぞれ仮に執行することができ、被告において、原告河鐘弼、同卞廣子に対し各金五〇〇、〇〇〇円、同吉見徳次、同吉見幸子に対し各金四〇〇、〇〇〇円、同吉見喜代治、同吉見はるゑ、同上山八郎、同上山竹乃に対し各金三〇〇、〇〇〇円の担保を各供するときはそれぞれその執行を免れることができる。

事  実 <省略>

理由

一  本件事故の発生

請求原因(一)の事実中、訴外河文宏、同吉見勝男、同吉見真知子同上山利枝子らが、昭和四七年九月一六日午後一〇時三〇分頃、兵庫県水上郡市島町東勅使付近国道一七五号線を、乗用車で走行中、車もろとも竹田川に転落し、右吉見勝男を除く三名が死亡し、右吉見勝男については、昭和四九年七月一九日失踪宣告の裁判確定により同四七年九月一六日死亡したとみなされるに至つたこと、および、右転落個所付近において道路が一部欠壊したことは、いずれも当事者間に争いがない。

以上の事実に、<証拠省略>を総合すると、訴外河文宏が、原告河鐘弼所有の自動車(神戸五五な四九七七号)に、訴外吉見勝男、同吉見真知子、同上山利枝子を同乗させ、直線道路となつている右事故現場付近を南進中のところ、右同所から北約一〇〇メートルの付近で、訴外側敏彦が運転向進中のトラツクを追い越し、再び南行の竹田川沿いの車線に復したのち、その頃、竹田川の梶原上井堰の個所(道路がその中央寄りへ約三メートル欠壊、本件第一欠壊個所)で、やや川側に傾きざま、沈むようにして右欠壊部の濁流に転落したことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

してみると、右河文宏らは、右道路の欠壊により、それぞれ死するに至つたことは明らかであり、その死因の如何により、右の結論を左右することはできない。

二  被告の責任

<証拠省略>によれば、次の事実が認められる。

本件道路(国道一七五号線、二級道路)は、兵庫県丹波地方から京都府福知山市に至る幹線道路であつて、竹田川の西側堤防を利用して設置され、交通量も多く、本件欠壊個所付近では、巾員約六・六〇メートル、厚さ約一〇ないし一五センチメートルのアスフアルト舗装(昭和四一年)の防護柵のない直線道路となり、その両端に約五〇センチメートル、深さ約三〇センチメートルの舗装嵩上げコンクリート(底部は砂利、土砂)が打込まれ、平常の場合は、道路面から、約三・三〇メートル下方に水面をもつて竹田川が南から北に流れ、道路側端から法面勾配水平一、垂直二で、高さ約一・六〇メートルの石積みを経て川床に至つているが右道路は、竹田川の堤防とのいわゆる兼用工作物とされていたこと、右竹田川は、一級河川で、事故現場の上流では日ケ奥川が合流し、その下流は由良川となつているところ、本件欠壊個所の約四〇メートル上流には、春日部池尾部落に通ずる池尾橋があり、その上流では川巾も広く、雑草の繁る川原となつて道路工事用の砂利が採取されたこともあり、右竹田川の水流は、平常、池尾橋から上流一〇ないし二〇メートルの個所で、堤防に対し約二〇度の角度で水衛点となり、池尾橋から本件欠壊個所付近では川巾が約三〇メートルと狭くなり、右左岸欠壊個所から右岸にかけて、巾約一〇メートルの梶原上井堰が、川の流れの中にこれを横切つて設けられ、右岸では右堰の石垣が川の中に出ているため、川巾がさらに狭くなつているが、右井堰付近では、右岸堤防の方が、左岸道路面より低くなつていたこと、本件欠壊個所付近は、昭和三四年頃、竹田川の洪水(水位三・三メートル)により、梶原上井堰が流失したことに伴ない、右井堰について両岸に石積みをし、流水面はコンクリート仕上げとされ、また、川床部分も約一・二〇メートル下部まで根入れされたし、その頃、井堰付近の左岸護岸工事により、本件欠壊個所付近は石とコンクリートの両者で固め、その奥へ栗石がつめこまれたが、右井堰は、下流からみた場合、河床面より約一メートルの高さで、堰止められる高さは二メートル余であつたところ、石井堰も、本件事故現場が欠壊した頃洪水により流されてしまつて川床部が深く堀れ込み、右岸の石垣の一部が残されたに過ぎず、本件欠壊個所の石積みの下の沈床枠も流されてしまつていること、当夜午後一〇時頃、訴外側敏彦らが、本件欠壊個所下流で、河川工事用重機を川から引上げようとして通行した頃には、右欠壊個所がやや軟かくなつていたところ、同日午後一〇時二〇分過ぎには、右事故現場が川沿いに約一〇メートル、道路側へ約二・六五ないし三メートル欠壊し、これが後さらに同一七メートル、道路中央寄り約四・三二メートルにわたつて欠壊し(本件第一欠壊個所)、同日午後一一時三〇分から一二時頃には、右欠壊個所から上流の池尾橋付近が川沿いに約八〇メートル、道路側へ約八・七メートルにわたり半月形に欠壊し(第二欠壊個所)、その頃、池尾橋も流出したこと、当日は、台風二〇号(九月一六日午後六時三〇分頃潮岬付近に上陸)の影響で朝から雨模様で、午後には風雨が強まり午後六時三〇分頃には兵庫県北部に暴風雨、波浪注意警報が、同日午後一〇時三〇分頃には、右のほか洪水注意報が発せられたところ、午後七時三〇分頃からは、竹田川の水位も上昇し始め(雨量も午後一〇時三〇分頃には一三八ミリメートルに及んでいる)、午後一〇時頃には、本件道路面から約一メートル下、午後一〇時三〇分から同一一時三〇分頃にかけて右道路面近くに達し、右路面より五〇センチメートル低い右池尾橋も水で洗われる程度となつていたが、同日午後一二時頃からは減少し始め、その頃には、水位は、右路面下約一メートル程度となつたこと、柏原土木事務所々員らは、当日午後四時頃から、水防指令第二号に基づき所員を動員して警戒体制に入り、パトロールカー数台を動かさせて、右一七五号線の警戒にあたり、後、三〇分ないし一時間の間隔で柏原から福知山方面へのパトロールを強化していたが、同日午後九時五〇分頃、本件欠壊個所付近を通過した際も、道路に異常を認めていなかつたところ、午後一一時頃、本件第一欠壊個所における自動車転落の情報に接し、その後、右一七五号線を通行止めとする措置をとるに至つたこと、本件事故現場付近道路は、兵庫県知事が国から機関委任を受け、さらに、これを兵庫県柏原土木事務所が所管し、河川の方も同事務所が管理しているものであるが、過去一〇数年間、本件事故現場付近上・下流で道路の崩壊、堤防の欠壊はなかつたこと。

以上の事実が認められ、右認定に牴触する<証拠省略>は採用せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない(なお原告らは、梶原上井堰より下流の工事が右井堰の決壊の一因とするけれども、<証拠省略>によれば、その河床工事は、右井堰から約二〇メートル下流のものであることが認められるから、これを考慮の外に置くこととする。)。

そして、右の事実によれば、本件欠壊個所下の梶原上井堰が、右同日午後一〇時三〇分頃水量が最高となつた洪水、したがつてその流速と水圧によりまず決壊し、右欠壊個所の河床部分が水流によりえぐられた結果川床が低下し、右道路下の石積み部分、ついで、道路アスフアルト下部の土砂が洗われて流出し、これによりついにアスフアルトが陥没し、道路の欠壊を生ずるに至つたものと推認され、この反証はない。

よつて、検討を進めるに、まず、道路が河川の堤防との兼用工作物とされる場合にあつては、道路の管理者においても、河川の状況による道路への影響を考慮して管理を強化し、これについて注意を怠ることはできないというべきところ、本件欠壊個所が、川流の直衝点でないにしても、池尾橋と梶原上井堰間の川巾が狭く、河床にも右井堰のコンクリート部が高くなつているばかりか、昭和三四年頃には右井堰が流失し、その付近堤防を含めた修復を余儀なくされていたのであるから、これまでの雨量ないし洪水の状況等から、本件欠壊個所付近の道路の欠壊がすでに予見し得たと考えられ、単に、右個所付近右岸が左岸道路面より低いことをもつて満足せず、道路河川側の石積みを一層強化するか、井堰についての管理を厳重にするようにすべきであつたとみられ、事故当日のパトロールをもつてしても、これが十分つくされたものとみることもできないから、結局、本件道路については、河川の状況と、兼用工作物である道路との関係からみて、通常具有すべき安全性を欠いていたと解すべく、したがつて、その維持、保管に瑕疵があつたといわざるを得ない。

してみると、被告の本件事故をもつて不可抗力とする主張は排斥を免れず、被告は、国家賠償法第二条第一項にしたがい、損害賠償の責に任ずべきものである。

三  原告側の過失

訴外河文宏が、自動車に訴外吉見勝男ほか二名を同乗して走行中、本件事故に遭遇したものであることは前示のとおりであり、<証拠省略>によれば、訴外吉見勝男は、昭和四七年九月一六日午後五時頃、訴外河文宏をさそい、同人運転の自動車で、福知山に修理に出している自動車をとりに出かけたところ、途中で、訴外吉見真知子、同上山利枝子を同乗させ、訴外河文宏が運転して帰途についたところ、右河文宏は、当夜気象条件が悪く雨が激しく降つていて前方のみとおしが必ずしも十分でないのに、早く帰宅しようとして、約六〇キロメートル毎時の速度で、国道一七五号線を南進し、本件欠壊個所北一〇〇メートルの地点で、訴外側敏彦運転のトラックを追い越し、水しぶきを上げながら、南行の川沿い側車線に復する走行を続け、しかも、その頃、対向のトラツク運転者が本件欠壊個所付近を徐行し、道路の欠壊を通報すべくヘツドライトを点滅していたのにこれらを看過し、左に傾斜しながら本件欠壊個所の濁流に転落し、路上にスリツプ痕もとどめていないことがそれぞれ認められ、右認定を動かすに足る証拠はない。

そして以上の事実関係にしたがえば、訴外河文宏には本件事故発生について過失があり、また、訴外吉見勝男ら同乗者にも、右河文宏の走行を制止していないことが窺われるから、右訴外吉見勝男らにも過失があると評すべく、これらの過失は、右訴外人らの損害を承継し、ないし、自ら固有のものとして請求する原告らについても、被害者側の過失として考慮すべきものであつて、結局、その過失の態様により、訴外河文宏について四〇パーセント、訴外吉見勝男について二〇パーセント、訴外吉見真知子らについて各一〇パーセントと認めるのが相当である。

四  本件事故による損害

(一)  原告河鐘弼、同卞廣子関係

(イ)  訴外河文宏の損害

1 逸失利益

<証拠省略>によれば、訴外河文宏は、一九五一年八月一九日、右原告ら間に生れた健康な男子で、父親河鐘弼の廃品回収業の手伝いをしていたところ、給与等として一か月金四〇、〇〇〇円ないし金五〇、〇〇〇円の支給を受けていたことが認められ、右認定を覆えす証拠はない。そして、以上の事実によれば、右原告らの主張を修正し、右河文宏は年収金七〇〇、〇〇〇円であり、生活費五〇パーセント、稼働可能年数を四〇年と認めるのが相当であるから、これについてホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して得られる事故当時における一時払い額を求めると、右は金七、五八〇、〇〇〇円(ただし、金一〇、〇〇〇円未満切上げ)となる。

2 慰藉料

右河文宏の本件事故による苦痛は、金一、〇〇〇、〇〇〇円で慰藉されるのが相当である。

(ロ)  原告河鐘弼らの損害

1 慰藉料

右原告らの慰藉料は、各金一、二〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

2 葬儀費

<証拠省略>によれば、同原告が訴外河文宏の葬儀をとり行なつたことが認められ、右費用として金三〇〇、〇〇〇円を相当と認める。

(ハ)  過失相殺

前示訴外河文宏の過失を斟酌して、右各損害額を控除すると、右河文宏について金五、一四八、〇〇〇円、原告河鐘弼について金九〇〇、〇〇〇円、同卞廣子について金七二〇、〇〇〇円となる。

(ニ)  相続

原告らは、前示のとおり訴外河文宏の両親であり、<証拠省略>によれば、本件事故による右河文宏の損害を承継したとして、これを全部的に請求していることが窺われるので、原告らについて、右金五、一四八、〇〇〇円の各二分の一である金二、五七四、〇〇〇円として計算することとなる。してみると、原告らの損害は、原告河鐘弼について合計金三、四七四、〇〇〇円、同卞廣子について合計金三、二九四、〇〇〇円となる。

(ホ)  弁護士費用

本件訴訟の経過等の事実によれば、右原告らの弁護士費用のうち、原告河鐘弼について金三〇〇、〇〇〇円、同卞廣子について金二五〇、〇〇〇円をもつて、本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。

(二)  原告吉見徳次、同吉見幸子関係

(イ)  訴外吉見勝男の損害

1 逸失利益

<証拠省略>によれば、訴外吉見勝男は、昭和二五年四月三日、右原告ら間に長男として生れた健康な男子で、当時大工として、春日町の三原工務店に勤めたり、自ら仕事を請負つたりし、右工務店において、一か月金八〇、〇〇〇円の給与を受けていたことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。そして、以上の事実よれば、右原告らの主張を修正し、右吉見勝男は年収金八〇〇、〇〇〇円、生活費を五〇パーセント、稼働可能年数を四〇年と認めるのが相当であるから、これについて、ホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して得られる事故当時における一時払い額を求めると、右は金八、六六〇、〇〇〇円(ただし、金一〇、〇〇〇円未満切上げ)となる。

2 慰藉料

右吉見勝男の本件事故による苦痛は、金一、〇〇〇、〇〇〇円で慰藉されるのが相当であると認める。

(ロ)  原告吉見徳次、同吉見幸子の損害

1 慰藉料

右原告の慰藉料は、各金一、二〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

2 葬儀費

<証拠省略>によれば、右吉見勝男の死体はあがらなかつたが葬儀はとり行なつたことが認められ右費用は金二〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

(ハ)  過失相殺

前示訴外吉見勝男の過失を考慮して、右各損害額について控除すると、訴外吉見勝男について金七、七二八、〇〇〇円、原告吉見徳次について金一、一二〇、〇〇〇円、同吉見幸子について金九六〇、〇〇〇円となる。

(ニ)  相続

右原告らは、前示のとおり訴外吉見勝男の両親として、右金七、七二八、〇〇〇円の各二分の一である金三、八六四、〇〇〇円を相続により承継したことは明らかであるから、原告らの損害は、原告吉見徳次について合計金四、九八四、〇〇〇円、同吉見幸子について合計金四、八二四、〇〇〇円となる。

(ホ)  損害の填補

右原告らが、訴外吉見勝男の死亡により、自賠責保険として各金二、五〇〇、〇〇〇円の給付を受けたことは当事者間に争いがないから、これを右各損害額から控除すると、原告吉見徳次について金二、四八四、〇〇〇円、同吉見幸子について、金二、三二四、〇〇〇円となる。

(ヘ)  弁護士費用

本件訴訟の経過等の事実によれば、右原告らの弁護士費用は、原告吉見徳次について金二五〇、〇〇〇円、同吉見幸子について金二〇〇、〇〇〇円の限度で、本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。

(三)原告吉見喜代治、同吉見はるゑ関係

(イ)  訴外吉見真知子の損害

1 逸失利益

<証拠省略>によれば、訴外吉見真知子は、昭和二八年七月一五日、右原告ら間に二女として生れた健康な女子で、当時福知山市の山崎商店に勤め、一か月金三六、〇〇〇円程度の給料、ならびに、金六六、〇〇〇円の賞与を得ていたことが認められ、これを覆えすに足る証拠はないから、同女の年収は金五〇〇、〇〇〇円と認められ、また、右職業を前提とすると、その生活費は五〇パーセント、稼働可能年数は四〇年と認めるのが相当であるから、これについてホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して得られる事故当時における一時払い額を求めると、右は金五、四一〇、〇〇〇円(ただし、金一〇、〇〇〇円未満切捨て)となる。

2 慰藉料

右訴外吉見真知子の本件事故による苦痛は、金一、〇〇〇、〇〇〇円で慰藉されるのが相当であると認める。

(ロ)  原告吉見喜代治、同吉見はるゑの損害

1 慰藉料

右原告らの慰藉料は各金一、二〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

2 葬儀費

弁論の全趣旨によれば、原告吉見喜代治が、右訴外吉見真知子の葬儀をとり行なつたことが認められるところ、右費用は金三〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

(ハ)  過失相殺

前示訴外吉見真知子の過失を考慮して、右各損害額について控除すると、訴外吉見真知子について金五、七六〇、〇〇〇円(ただし、金一〇、〇〇〇円未満切捨て)、原告吉見喜代治について金一、三五〇、〇〇〇円、同吉見はるゑについて金一、〇八〇、〇〇〇円となる。

(ニ)  相続

右原告らは、前示のとおり、訴外吉見真知子の両親として右金五、七六〇、〇〇〇円の二分の一である金二、八八〇、〇〇〇円を相続により各承継したことは明らかであるから、右原告らの損害は、原告吉見喜代治について合計金四、二三〇、〇〇〇円、同吉見はるゑについて合計金三、九六〇、〇〇〇円となる。

(ホ)  損害の填補

右原告らが、訴外吉見真知子の死亡により、自賠責保険として各金二、五〇〇、〇〇〇円の給付を受けたことは、右原告らの自認するところであるから、これを右各損害額から控除すると、原告吉見喜代治について金一、七三〇、〇〇〇円同吉見はるゑについて金一、四六〇、〇〇〇円となる。

(ヘ)  弁護士費用

本件訴訟の経過等の事実にしたがえば、右原告らの弁護士費用としては、原告吉見喜代治について金一五〇、〇〇〇円同吉見はるゑについて金一二〇、〇〇〇円の限度で、本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。

(四)  原告上山八郎、同上山竹乃関係

(イ)  訴外上山利枝子の損害

1 逸失利益

<証拠省略>によれば、訴外上山利枝子は、昭和二八年一一月八日、右原告ら間に二女として生れた健康な女子で、当時福知山市の山崎商店に勤務し、一か月金三六、〇〇〇円程度の給料、ならびに、金六六、〇〇〇円の賞与を得ていたことが認められ、これを覆えすに足る証拠はないから、同女の年収は金五〇〇、〇〇〇円と認められ、また、右職業を前提とすると、その生活費は五〇パーセント、稼働可能年数は四〇年と認めるのが相当であるから、これについて、ホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して得られる事故当時における一時払い額を求めると、右は金五、四一〇、〇〇〇円(ただし、金一〇、〇〇〇円未満切捨て)となる。

2 慰藉料

右訴外上山利枝子の本件事故による苦痛は、金一、〇〇〇、〇〇〇円で慰藉されるのが相当であると認める。

(ロ)  原告上山八郎、同上山竹乃の損害

1 慰藉料

右原告らの慰藉料は、各金一、二〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。

2 葬儀費

<証拠省略>によれば、原告上山八郎が訴外上山利枝子について葬儀をとり行なつたことが認められ、右費用は金三〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。

(ハ)  過失相殺

前示訴外上山利枝子の過失を考慮して、右各損害額について控除すると、訴外上山利枝子について金五、七六〇、〇〇〇円(ただし、金一〇、〇〇〇円未満切捨て)、原告上山八郎について金一、三五〇、〇〇〇円、同上山竹乃について金一、〇八〇、〇〇〇円となる。

(ニ)  相続

右原告らは、前示のとおり、訴外上山和枝子の両親として、右金五、七六〇、〇〇〇円の二分の一である金二、八八〇、〇〇〇円を相続により各承継したことは明らかであるから、右原告らの損害は、原告上山八郎について合計金四、二三〇、〇〇〇円、同上山竹乃について合計金三、九六〇、〇〇〇円となる。

(ホ)  損害の填補

右原告らが、訴外上山利枝子の死亡により、自賠責保険として各金二、五〇〇、〇〇〇円の給付を受けたことは、右原告らの自認するところであるから、これを右各損害額から控除すると、原告上山八郎について金一、七三〇、〇〇〇円、同上山竹乃について金一、四六〇、〇〇〇円となる。

(ヘ)  弁護士費用

本件訴訟の経過等の事実にしたがえば、右原告らの弁護士費用としては、原告上山八郎について金一五〇、〇〇〇円、同上山竹乃について金一二〇、〇〇〇円の限度で、本件事故と相当因果関係を有する損害と認める。

五  結論

してみると、原告らの本件請求は、被告に対し、原告河鐘弼において、金三、七七四、〇〇〇円、および、弁護士費用を除く金三、四七四、〇〇〇円に対する本件事故の発生の日の翌日である昭和四七年九月一七日から完済に至るまで民事法定利率たる年五分の割合による遅延損害金、同卞廣子において金三、五四四、〇〇〇円、および、同金三、二九四、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金、同吉見徳次において、金二、七三四、〇〇〇円、および、同金二、四八四、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金、同吉見幸子において、金二、五二四、〇〇〇円、および、同金二、三二四、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金、同吉見喜代治において、金一、八八〇、〇〇〇円、および、同一、七三〇、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金、同吉見はるゑにおいて、金一、五八〇、〇〇〇円、および、同金一、四六〇、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金、原告上山八郎において、金一、八八〇、〇〇〇円、および、同金一、七三〇、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金、原告上山竹乃において、金一、五八〇、〇〇〇円および、同金一、四六〇、〇〇〇円に対する右同日から右同様の割合による遅延損害金の各支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は、いずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言、ならびに、その免脱の宣言について同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 稲垣喬)

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